『羅生門』論 『羅生門』は高校国語の教材として定番である。ウィキペディアで『羅生門」を調べると、「生きるための悪という人間のエゴイズムを克明に描き出し」とある。教科書会社の通信雑誌に「エゴイズムと戦う下人像を描いた『羅生門』」とある。また、現在使っている教科書会社準拠の問題集にはエゴイズムを正解とする問題が出されている。何人かの国語の教員に話しを聞くと、エゴイズムとしては扱っていないという人も多数いるが、教員になりたての時期に指導書に書いてあったエゴイズムの見方に今も影響を受けている人もいる。ここでは、『羅生門』の中で私に違和感があったものを中心に、まず表現の特徴を明らかにし、次に「エゴイズム…