人が住まなくなった民家を店に改築したのだろう。花のない庭には、支柱も鎖も赤く錆びついたブランコが置き忘れられていた。ドアの両側には棕櫚の木が番兵のように突っ立っている。 ドアを開けると中は、良く磨かれたダークブラウンの床に、きちんと揃えられた容器の瓶が整然と並べられている。そして、店主は客用の椅子の脇に付属品のように立っていた。 店主の理容師はかつては名の知れた熟練の理容師で、今は田舎に引きこもってほそぼそと理髪店をやっているようです。そこへ腕を見込んで、若者が遠路はるばるとやってきたのに気を良くして、理容師がぺらぺらと自身の身の上話を若者に語って聞かせているというような、どこか昭和レトロを思…