驚いた。 川崎に、押しも押されぬ首都圏に、人口百四十五万の都市に、 まさかこんな和やかな、藁ぶき屋根の家並みがあるとは。 意外千万そのものである。 ここは日本民家園、生田緑地の一角を占める「古民家の野外博物館」。北は奥州・岩手から南は鹿児島・沖永良部島に至るまで、日本各所の旧き家屋を蒐集・展示している施設。 ほとんどの家屋が立ち入り可能で、 その構造の逐一を内よりとっくり見確かめられる。 筵の敷かれた囲炉裏端。飢饉のときにはこいつを刻んで煮て喰うわけだ。汗やら何やら、色んなモノが、多年に亘って滲み込みまくっているゆえに、味付けには困らない。 この農具は、『天穂のサクナヒメ』で見覚えがある。 籾…