学生時代に弾いて以来、古びた黒いハードケースの中に入れっぱなしになっていたアコースティックギターを、ちょいと弾いてみようという気になったのは、社会人になって十数年たった頃だった。結婚してからも手許に置いてはいたものの、ベッドの下の見えないところでほこりをかぶったままになっていたのだ。 きっかけは、当時SMAPが歌って流行り始めていた「セロリ」を見知らぬ青年が歌うライブ映像だった。その映像を何気なく眺めていて、思わず身を乗り出した。それは、山崎まさよしの演奏に初めて触れた瞬間だった。僕はその新しい才能を感じる新人ミュージシャンの映像を見て、とても高揚した気分になり、同時になんだか無性にギターを弾…