『銀河鉄道の夜』は,夢の中で主人公のジョバンニと水死したカムパネルラが銀河鉄道の列車に乗って天上(死後の世界)を旅する物語である。最初に到着する天の野原には,南欧(イタリア)を彷彿させるロマネスクやゴシック様式の教会堂(=三角標)と光り輝く植物が混在する明るく美しい風景が広がっている(石井,2014)。やがて,列車は,西へ進路をとり,イギリスの化石発掘場所を経由したのち大西洋を横断して北米へ向かうことになる。しかし,北米北東部の教会堂や近代国家を象徴する工場群の煙突(=三角標)のあるコネチィカット州周辺を通過した辺りから物悲しい悲劇的な風景が出現してくるようになる。 車窓の外には「黒い鳥」が現…