アレントとウィルソン──「人間そのもの」へと収束する二つの思考 本論説の意図 本論説の意図は、ハンナ・アレントとエドワード・O・ウィルソンという異なる領域の思考が、最終的に同じ一点──「人間そのもの」──へと収束していく過程を明らかにすることである。政治哲学と生物学という離れた視座が、なぜ人間の本性という扱いにくい対象に向かうのか。その理由をたどりながら、制度や環境よりも先に、私たち自身を理解する必要性を考え直すことを目的としている。 1. 最大の不安材料は“人間”である(アレント) 「現在あなたにとって最大の不安材料は何ですか」。アレントが紹介するこの問いに、ほとんど全員が「人間」と答えたと…