訓読 >>> 蝦(かはず)鳴く神奈備川(かむなびがは)に影(かげ)見えて今か咲くらむ山吹(やまぶき)の花 要旨 >>> 河鹿(かじか)の鳴く神奈備川に影を映して、今は咲いているだろうか、山吹の花は。 鑑賞 >>> 厚見王(あつみのおおきみ)が、山吹の咲く頃に、以前に見たことのある神奈備川の岸辺の山吹を思い出して詠んだ歌。厚見王は系譜未詳ながら、続紀に、天平勝宝元年に従五位下を授けられ、天平宝字元年に従五位上を授けられたことが記されています。『万葉集』には3首の歌を残しており、万葉末期の歌風をよく表していると評価される歌人です。この歌は『万葉集』の掲載順から、天平年間(729~749年)の前半に…