🪷平家物語 第1巻 神輿振〈みこしぶり〉🪷 加賀守師高、目代師経の断罪を度々叫び続けていたのにも拘らず、 一向に沙汰のないのにしびれを切らした山門の僧兵達は、 再び実力で、事を処理する決心を固めた。 折柄行われる予定の日吉《ひえ》の祭礼をとりやめると、 安元《あんげん》三年四月、御輿を陣頭に京へくり出して来た。 賀茂の河原から、法成寺《ほうじょうじ》の一角に兵をくり出し、 御所を東北から囲む体形で迫ってきた。 京の街々辻々には、 坊主、神官、その他、各寺、神社に仕える者達がはしくれに至るまで、 都大路をぎっしり埋めていた。 神輿は、折柄の朝日を受けて、輝くばかりのきらびやかさで、 人目をうばう…