葬儀会館の壁に蟷螂(とうろう/カマキリ科の昆虫)が じっと身動きせずにいます。 蟷螂は昨日から、ずっと同じ所に張り付いたままです。 私はその枯れたような茶色の姿に、藤原さんを思いました。 彼がwさんとのトラブルでこのお寺を去ってから、もう数日が経ちました。 あの日、藤原さんが狂ったように咆哮を上げながら歩いた境内には 秋の陽が降り注ぎ、黄色や赤に色づいた木の葉が散っています。 私が九月から仕事をすることになったお寺での毎日、それは一カ月ほどで 思いがけないアクシデントに見舞われることになったのですが その結末を、かいつまんでお話ししておきたいと思います。 ~あの日、境内で藤原さんが奇声を上げる…