訓読 >>> 正月(むつき)立ち春の来らばかくしこそ梅を招きつつ楽しきを経(へ)め 要旨 >>> 正月になり、新春を迎えたら、こうやって梅を見ながら楽しい一日を過ごしましょう。 鑑賞 >>> この歌は、天平2年正月13日、大伴旅人の邸宅での宴で詠まれた「梅の歌」32首の最初の歌です。作者の大弐(だいに)紀卿(きのまえつきみ)は、主人の旅人に次ぐ大宰府次官の紀男人(きのおひと)で、賓客の中では最高位の人です。開宴の冒頭にふさわしく、言祝いで挨拶をしつつ、一同に楽しみ尽くそうと呼びかけています。「かくしこそ」の「かく」は、このように。「し」は、強意の副助詞。「招きつつ」は、梅を正客に見立てた擬人的…