歌舞伎座の第三部初日を観る。 『松竹梅湯島掛額』は前半はばかばかしいほどのドタバタ喜劇、後半はうってかわってシリアスな人形振りと、ある意味でいかにも歌舞伎らしい演目。 「吉祥院」では誕生日(この日は菊五郎の誕生日)をはじめとする内輪ネタからオリンピックのピクトグラムまで、これでもかというほど時事ネタの入れごとでごったがえすが、菊五郎はそれを恥ずかしげもなくきっぱりと演じるのでそれほどダレることがない。あいかわらず誰よりも響きわたる声が健在なのもなにより。 権十郎の釜屋武兵衛、片岡亀蔵の長沼六郎、團蔵の和尚、梅花のお杉、菊市郎の十内と、脇もていねいに楷書で演じていてよいアンサンブル。しかし、こう…