グラッドストンは意志の強い男であった。 一度正しいと信じたことは決して曲げない。全国民から反対意見を突き付けられても、あくまで初志を貫き通す、孤軍奮闘をものともしない勇猛心の持ち主だった。 (Wikipediaより、グラッドストン) ――自我のみを愛しみ、崇信せよ。 とはウパニシャッド経典の嘗て説いたところだが、何の因果か、グラッドストンの人格は、このインド哲学の妙諦に、忠実に沿って設計されたようだった。 「そういうやつだ」 と、彼をよく知る軍高官が言っている。 「もしもウィリアム・グラッドストンが海軍に入隊したならば、たぶん、おそらく、最終的に、昔ながらの最も剛毅な司令官として名を馳せていた…