僕は32歳の時に臨床治験で入院している。統合失調症の新薬開発に協力しようと病院の張り紙を見て応募したのだ。これは治験コーディネーターが付いてくれて協力してくれるもので、有償のボランティアのような感覚で参加することにした。治験を経て薬が認可されると、その新薬を一年間無料で服薬できることと、この新薬の開発に治験者として参加したことに誇りを持てるということも参加理由の一つであった。 ソラは僕が入院している最中は実家に戻ることとした。ソラの性格上きっと心配で一人で暮らすのは落ち着かないだろうと思ったし、僕もその方が安心して入院できた。 治験開始当日、僕の主治医が不幸があったということで初めての主治医が…