2018年7月号掲載 毎日新聞夕刊報道グループ記者(当時)/藤原章生 男3人で丹沢の沢登りに行ったときのこと。私が前を歩いていると、二人のこんな会話が聞こえた。 「いつも藤原さんに沢に連れてってもらってるんですよ。今年の冬は山スキーにも」「へえ、どこ行ったの」 一人は山登りを始めてまもない年下の男。もう一人は学生時代からの山仲間の大阪出身の男だ。 「谷川岳ですけど、全然登れなくて。(スキー板の裏につける)シールが初めてで、うまく使えなくて。藤原さんはすごいスピードでどんどん行っちゃいますから」「ははは、藤原、自分のことしか考えてないから」 図星かもしれない。私は自分のことしか考えていない。自分…