河合隼雄は『宗教と科学』の中で、「心の病は主観の病であり、深層心理学は主観を対象とする科学」と言っています。しかし、多くのおとなは「客観的な自分」=自分だと思っていて、自分が主観的だとはあまり思っていません。 しかし、本人が思っている「客観的な自分」の意見や考えというのは、多くの場合「主観(感覚・感情)に無意識的に支配された意見や考え」であり、さもなければそれは「他人の(または科学的な)考えや意見」なのです。 そういうわけで、主観の歪み、バイアス(偏り)に気づく=自分のことを考えるというのはなかなか難しいのですが、河合隼雄はその理由として理性の発達と科学の影響を挙げました。それが今回の引用文の…