🪷【源氏物語584 第19帖 薄雲15】明石の上のことを絶えず思いやっている源氏は、公私の正月の用が片づいたころのある日、大井へ出かけようとして、ときめく心に装いを凝らしていた。 〜山荘の人のことを絶えず思いやっている源氏は、 公私の正月の用が片づいたころのある日、 大井へ出かけようとして、 ときめく心に装いを凝らしていた。 桜の色の直衣《のうし》の下に美しい服を幾枚か重ねて、 ひととおり薫物《たきもの》が たきしめられたあとで、 夫人へ出かけの言葉を源氏はかけに来た。 明るい夕日の光に今日はいっそう美しく見えた。 夫人は恨めしい心を抱きながら見送っているのであった。 無邪気な姫君が源氏の裾《…