大井の山荘は風流に住みなされていた。 建物も普通の形式離れのした雅味のある家なのである。 明石は源氏が見るたびに 美が完成されていくと思う容姿を持っていて、 この人は貴女《きじょ》に何ほども劣るところがない。 身分から常識的に想像すれば、 ありうべくもないことと思うであろうが、 それも世間と相いれない偏狭な親の性格などが 禍《わざわ》いしているだけで、 家柄などは決して悪くはないのであるから、 かくあるのが自然であるとも源氏は思っていた。 逢っている時が短くて、 すぐに帰邸を思わねばならぬことを苦しがって、 「夢のわたりの浮き橋か」 (うち渡しつつ物をこそ思へ)と源氏は歎かれて、 十三絃の出て…