編集者や教職にあるかたから、お若い作者の小説を、読んでみて欲しいとの依頼を受けることがある。老人に理解できるものかどうか、もとより自信はないけれども、それでも私でよいとおっしゃられれば、読ませていただく。 力を籠めて書かれた労作だろうから、丁寧に拝見したいところだが、ざっと読んで、すぐに感想を欲しいとの、無理難題を課されることが多い。業界最底辺の「闇の片づけ屋」「ハイエナ集団」の一人だった頃のシガラミで、いたしかたもない。 とりあえず、原稿用紙の束を、ぺらぺらめくってみる。それから冒頭の三枚と末尾の三枚を見せてくださいと、お願いする。 芹沢博文という将棋の九段がいらっしゃった。筆禍・舌禍事件で…