スマホの中身を整理していると、思いがけず所謂“思い出”に遭遇して苦しい。ああ、私はあの時とても苦しかったし、今も引き続き苦しいんだなと思った。対峙している時は。普段は、現実に“今”に「気が逸れている」ということか。なかったことに出来ない以上、折り合いをつけるしかないのだけれど、一生気を逸らし続ける、他のことで気を紛らわせ続けるしかないのだろうか。薄れても、掠れても、全くの上書きにはならない。忘れたフリが上手にならなければ、いつまでも巻き戻しと一時停止を繰り返す。 ひとつの写真に、複数の思い出が紐づいているとき、苦しい記憶のために良き記録まで削除する決断ができない。何だってそう。単純な作りなら、…