【平家物語40 第2巻 大納言死去①】 やがて、 法勝寺執行《しゅぎょう》俊寛、丹波少将成経、平判官康頼の三人は、 清盛の命令で薩摩潟《さつまがた》の鬼界ヶ島《きかいがしま》に 流されることになった。 この鬼界ヶ島とは、都を遠く離れた孤島であり、 便船もろくろく通わないという離れ小島である。 住民は、土着の土民がいることはいるが、体は毛むくじゃらで、 色は真黒く、烏帽子《えぼし》をつけている男もいないし、 女は髪も下げていない。 言葉はてんで通じないという心細さである。 田を耕すすべも知らず、食物は専ら魚鳥を常食としている。 かいこなど飼うことも知らないから、 身にまとっている者はほとんどない…