葦と百合 (集英社文庫) 作者:奥泉 光 集英社 Amazon 『葦と百合』奥泉光著を読む。 カルトを扱った先駆け的作品として高橋和巳の『邪宗門』がある。これは、戦時中に国家から壊滅的な弾圧を受けた大本教団を下敷きにしたものだ。その徹底的な破壊のさまをかつて雑誌『GS たのしい知識』に掲載された写真で見たことがあるが、そちらのほうが、小説よりも、インパクトが強かった。 高橋は、おそらく信仰心と倫理観の対峙や葛藤など個人の内奥する問題よりも、国家組織や社会システムの方に力点を置いていたが、やっぱり個人の心の問題だろ。と、その時は思った。ま、『邪宗門』はポリフォニックな全体小説を意識して書かれたそ…