鏡の影ほどの確かさで 心は常にあなたから離れないだろうと言った、 恋しい人の面影はその言葉のとおりに目から離れなくても、 現実のことでないことは何にもならなかった。 源氏がそこから出入りした戸口、 よりかかっていることの多かった柱も見ては 胸が悲しみでふさがる夫人であった。 今の悲しみの量を過去の幾つの事に 比べてみることができたりする年配の人であっても、 こんなことは堪えられないに違いないのを、 だれよりも睦《むつ》まじく暮らして、 ある時は父にも母にもなって 愛撫《あいぶ》された保護者で 良人《おっと》だった人ににわかに引き離されて 女王が源氏を恋しく思うのはもっともである。 死んだ人であ…