次の三首は、巻四の「相聞」の末尾近くに載っている歌である。 作者は、大伴家持。送った相手は藤原久須麻呂という男性。 大伴宿祢家持報贈藤原朝臣久須麻呂歌三首 春の雨は いやしき降るに 梅の花 いまだ咲かなく いと若みかも(786) はるさめは いやしきふるに うめのはな いまださかなく いとわかみかも 【普通の意訳】 春雨がざーざー降っているけど、うちの梅の花はまだ咲かないんだよね。木が若すぎるからかもね。 夢のごと思ほゆるかも はしきやし 君が使ひの まねく通へば(787) ゆめのごと おもほゆるかも はしきやし きみがつかひの まねくかよへば 【普通の意訳】 まるで夢みたいで、現実とは思えな…