『百句燦燦』は、塚本邦雄が精選した、というよりも鍾愛する現代俳句百句を掲出し、鑑賞文を附した詞華集で、その講談社文芸文庫版の解説を橋本治はこう書き出している。 「私が書店の棚にある『百句燦燦』を見たのは、二十六歳の秋だった。」 二十六歳といえば一九七四年、「桃尻娘」で小説現代新人賞を受賞(佳作)する三年前のことだ。橋本治にとって、塚本邦雄は「畏敬」する存在であったが、「現代俳句への関心もなかったし、知識もなかった」ので買うのををためらった(高価でしたからね。当時の三千六百円の定価は、今ならだいたい一万円ぐらいの感じだろうか)。だが、「ここにはなにか、自分の分かりたいものがある」と思い購入した。…