坪内祐三は『文学を探せ』の中で沢木耕太郎の小説『血の味』をメッタ斬りしていて凄い。文芸春秋社の雑誌で書いているのがまた凄い。 「テロルの決算」が刊行された1978年に大学に入学した坪内は、沢木のノンフィクション作品の熱心な愛読者で、特に『敗れざる者たち』を繰り返し読んだ。 だが、1980年代後半、坪内が三十代に入り、文学に対する眼がそれなりに肥えてくると、沢木の端正な文章の奥にある作為性やナルシズムそして悪しき意味での文学性が鼻につくようになってきたという。 ノンフィクション作家として輝きを失ってしまった沢木耕太郎だが、小説家として新たな可能性を持っているのではないかとの期待から、彼の書下ろし…