江戸初期の豪商に、河村瑞賢という人がいる――彼は凄い男なのである。南伊勢の、さほど豊かではない農家の長男に生まれるが、13歳で江戸に出ている(跡継ぎのはずなのだが、江戸に出てきた理由ははっきりしていない)。江戸では、まずは車力になったそうであるから、どこぞの車借組織に雇われていたのかもしれない。この時に知り合った、車持ちの娘を妻に迎えている。 その後、行商人になっている。この頃の逸話として、川岸にお盆の供え物の野菜が川に流されているのを見つけ、それを乞食に拾わせ樽に塩漬けにしたものを売って小金を稼いだ、というエピソードが残っている。このように人をうまく使うのに天性の才があったのだろう、土木工事…