西行の詠とて、人口に膾炙せる歌、何事のおはしますかはしらねども、かたじけなさに淚こぼるゝ。は、類聚名物考に、撰集、家集、その他西行物語等にも見えず、唯人の口碑に云ひ傳へし所のみ、未だ出所を考へずといへり。されど家集本の終には、明かにこれを載せたることを思へば、この本の廣く行はれず名物考の編者の眼にも觸れざりしことを知るに足らん。 (藤岡作太郎「異本山家集」1906 巻末「西行論」(太字筆者)) 太神宮御祭日よめるとあり 何事のおはし まするばしらねども かたじけなさに なみだこぼるゝ 西行 (藤岡作太郎「異本山家集」1906) 西行の作。「西行法師歌集(西行上人集・西行法師家集・異本山家集とも…