今日、仕事を終え、アパートへ戻るミニバスを待っていたとき、地下鉄の入口から人が出たり入ったりするのをぼーっと眺めていた。突然、四角い穴の中から人が飛び出してきては、どこかへ去り、また、どこかから人がやってきては、四角い穴の中へと消える。ごくありふれた、当り前の風景だったが、僕には赤い壁の中へ人が隠れた瞬間、その人が消滅してしまったように感じたのだ。また、突然人が地下鉄の入口から飛び出してくるような感覚におそわれた。 地下鉄の入口に消えた人たちは、そのあとも階段を降り、地下の改札を抜けて、ホームへ向かう、わけではないらしい。ただ、そう思い込んでいるだけだ。入口の中へ人が消えた瞬間、その人はすでに…