ゲーム理論では,すべてのプレイヤーは合理的であるということが共有知識になっている,という条件が暗黙のうちに仮定されることが多いが,ゲーム理論の教科書でも共有知識の厳密な定義を与えることは少ない.しかし,このような知識に関わる仮定がゲーム理論の諸定理に必要ならば,その仮定を理解していないとゲーム理論を数学的に厳密に理解したことにはならない. また,ゲーム理論に限らず,複数の意思決定する主体(エージェント)からなるシステムであるマルチエージェントシステムにおいてもこのような問題は関わってくるし,知識や信念といった内的な状態を数学的に定式化すること自体興味深い. そこで,本記事では認識論理とよばれる…