元禄5年12月11日。朝、21になる情夫彦七と28になる女ふうが磔となる。夫吉左衛門は牢屋の前で女房に見せて首を切る。けんどん屋吉左衛門は、昔橘町の紅粉売りの婆から娘を金2両で貰い受けて育て上げた。婆もしおらしいので寵愛していた。若い男たちはこのけんどん屋にやって来てはふうを相手に酒を飲み、酔いに任せて手を握り、枕屏風を周りにめぐらせてうまくやっては銭を投げ与えた。亭主も納得の上で、また近いうちにお出で下さいと丁寧に礼をしていた。愛想もよく、茶屋女のように振る舞っていたが、公儀には女房と届けていた。納屋の金持ちの手代に彦七という身持ちの悪い男がいたが、奉公している期間も長く、旦那にお気に入りで…