ただしこの遺留分の放棄は、あくまでも遺留分の放棄に限定されますので、遺言書とセットでないと意味が無いといえます。通常通りに遺産分割協議を行なえば法定相続分のお話しになります。 この遺留分放棄を行わずに、生前にドンドン特定の相続人に生存贈与していった場合も特別受益として遺留分侵害額の請求を受けることになります。結論的には、被相続人が生存中に特定の相続人の相続権を奪うということは大変難しいという事です。
ただここで家庭裁判所の許可が必要とされているとあるのは、被相続人や他の相続人からの強制といった不当な干渉を防止するためです。そう簡単には遺留分の放棄は認めないという姿勢のあらわれでもあります。 認められる要件としては、遺留分に代わる生前贈与などをシッカリ受けていることやあくまでも相続放棄する相続人単独の意思での申し入れであることなどが複合的に必要です。
ただ相続放棄とは違い、この遺留分については被相続人存命の間に遺留分放棄という手続きを家庭裁判所に対して行うことができます。 民法409条「相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その協力を生じる」と定められています。つまりここに相続開始前に遺留分の放棄を認めるということが法的に書かれているわけです。
遺言書を作成することでひとりの人に全財産を集中させるという文言を書くことは可能です。ただそこには遺留分という問題が発生します。遺留分については別のところで詳しく述べますが、相続人には最低限保証された権利が残るという点です。本来持つ法定相続分の半分が残ります。なので遺言書で 相続対象から外されたとしても遺留分分侵害額の請求がされてしまうと遺産をもらった相続人は対応する必要が出てきてしまいます。
では被相続人が亡くなったあとできる相続放棄という手続きは生前にできるのでしょうか? 結論的には生前には出来ません。相続人の相続権は相続開始によってはじめて発生するものであり、相続開始前に放棄や譲渡などは出来ないことになっています。なので被相続人の権威にまかせて、「相続財産は要りません」という一筆を書かせても法的な効果は一切ありません。
相続の無料相談会などに参加するとこういった質問があることがあります。被相続人となる相談者が、自分の生きているうちに推定相続人である一人に相続を放棄させたい。 理由としては、今まで借金の肩代わりや資金の援助、また他の相続人には介護など世話になっている、事業承継のためには遺産分割してやれないなど 様々あります。