醍醐敏郎十段(1926‐2021) 嘉納治五郎が講道館を創設してから今日までに、事実上の最高位たる十段にまで昇り詰めた日本人は十五人しかない。そのお一人が、今年他界された。 時たま父を訪ねてみえる巨きな人が、全日本選手権を連破した柔道家だと聴かされても、その意味合いを理解するには、私は幼過ぎた。すでに現役引退されていた。拙宅近所の城西高校柔道部へご指導に見えられた帰りに、お寄りくださったのだったろう。 小学生になってある年の正月、講道館の鏡開きに呼んでいたゞいた。丸ノ内線後楽園まで独りで伺ったということは、高学年にはなっていたのだったろうか。 受付で「誰の紹介でやって来たか」と問われて、「醍醐…