徳川夢声(1894 - 1971) 昭和二十年(1945)三月上旬の徳川夢声は、銀座金春と新宿松竹に出演していた。 江戸能楽宗家の金春屋敷が幕末に麹町へ引越していった跡地は、明治以降も芸者衆が住んだりする粋な金春通り界隈として、名残を留めた。銀座通り七・八丁目と平行するひと筋西側(JR 側、皇居側)一帯である。劇場か演芸場があったものだろうか。私は知らない。 新宿松竹は私の知る時代は松竹映画劇場で、その後新宿ピカデリーと称ばれるようになり、今もシネマモールとして存続する場所だろう。その場所にも劇場か演芸場があったものだろうか。 今の寄席で申せば三月上席を、それぞれ昼夜二回出演するために、夢声は…