雑用をする僧は願文《がんもん》のことなどもよく心得ていて、 すばやくいろいろのことを済ませていく。 「いつもの藤原瑠璃君《ふじわらのるりぎみ》という方のために 経をあげてよくお祈りすると書いてください。 その方にね、近ごろお目にかかることができましたからね。 その願果たしもさせていただきます」 と右近の命じていることも九州の人々を感動させた。 「それは結構なことでしたね。 よくこちらでお祈りしているせいでしょう」 などとその僧は言っていた。 御堂の騒ぎは夜通し続いていた。 夜が明けたので右近は知った僧の坊へ姫君を伴って行った。 静かに話したいと思うからであろう。 質素なふうで来ているのを恥ずか…