うどんやそうめん(・・・・)あたりでは、ちょっとこういう情景は成立するとは思えない。 昭和二年も残すところ五十日を切るか切らないかといった、十一月十日の話。東京府庁に「そば職人」を名乗る壮漢三名が突如押し掛け、知事に面会を求めるという椿事があった。 当時の府知事は平塚広義。 「ヌラリクラリ党のエキスパート」と呼ばれた男。 (Wikipediaより、平塚広義) 自己を韜晦することに異様に長けた人物で、その技量により政党色すら灰色の中に埋没せしめ、政友・憲政・何方(いずかた)の手に政権与党が落ちようと、彼一人だけは常に首を繋ぎ続ける、──粛清人事を回避して出世を繰り返したゆえに、冠せられた渾名であ…