沢木 最近、気がつくと、吉行さんが僕らにしてくれていたようなことを、僕たちは若い人たちにしてこなかった。彼らが望まなかったのかもしれないけど。僕たちが吉行さんたちと付き合っていた時のようには、向こうもこっちに来なかったしね。先日、V6の岡田准一君と会って話したとき、岡田君に「酒場は学校だった」という話をしたら「そんな感じは僕たちにはない」と言われた。文士だけじゃなくて、ミュージシャンにも俳優にもジャーナリストにも、昔は、そういう学校じみた酒場があったわけじゃないですか。いま僕らの世代は先輩たちのように「教師」として下の世代に対応しているかな、と思ってね。(沢木耕太郎『青春の言葉たち』岩波書店、…