「おい、豆まきするぞ。窓を開けろ。」 建前だけの私の勉強中、いきなり父が部屋に入って言った。 「この寒いのに本気?」 「豆をまかないと、鬼が来るぞ。」 「・・・」 兄は働きだして社員寮に入っている。両親と私の3人で豆まきをやっても盛り上がりに欠けると夕飯中は話をしていたのに、洗い物をしている途中で考えが変わったようだった。確か高校1年の冬のことだ。 こうしたイベントが嫌いなわけでもなかったかが、急な予定変更で気持ちの切り替えに少し時間がかかった。それでも父に言われた通り窓を開け放って、 「豆は?」 と聞くと、 「母さんが煎っている途中。」 「煎ってある豆を買ったんじゃなかったっけ?」 「煎って…