著者:飛浩隆出版社:河出書房新社 全6編の短篇集だが、濃密で美しい文章と世界観は長編を読んだかのような満足感。 「未の木」では不思議な植木を贈り合い育てる夫婦の話が不気味で 読み手をも惑わす世界に引きずり込まれる感覚。 「流下の日」は古い時代を描いているかと思いきや、 政治に対する危機感を描き出す近未来の話。 「鎭子」は著者の作品「海の指」の世界を織り交ぜながら描く 現実と非現実の心理描写に圧迫される感じ。 3つのストーリーを順繰りに描く表題作(「しおつき」と読むなんて!)は 最も長い作品でさまざまな「しお」に翻弄される。 その他の作品も著者の描く緻密な世界は「グランヴァカンス」の 美しい構成…