「歎かざるの記」は国木田独歩が大分県佐伯市に赴任する半年程前に起筆した日記である。よって佐伯地方の情景や独歩のそこでの思索状況も実に細やかに綴られている。小説の題材も多く散見される。 旧坂本邸(独歩の寄宿先) 当時の佐伯地方をこの日記やその小説に探索してみる。佐伯地方に拓きたい各逍遥路に物語を加えたい一心からでもある。手始めに「鹿狩」から見る。 日記には鹿狩に行った事実だけしか書いていない。よって小説の主人公(少年)に独歩を仮託し、独歩の具体的な鹿狩体験を小説から推察する。少年は「中根の叔父さん」に鹿狩に誘われた。 舞台は「鶴見半島」である。まさに「しし垣ルート」が重なってくる。時期は赴任した…