「あれほどの男が恥を忍んで、私に頭を下げてきたんだからね。貸さないわけにはいかないじゃないの!」 以前、取材した浅草「ロック座」名誉会長・齋藤智恵子さんは、こういって苦笑いした。 彼女が言う「あれほどの男」とは、俳優の若山富三郎を指す。 齋藤さんは若山に5000万円、さらに弟・勝新太郎に20億円以上を用立てたものの、2人の死により、借金の大半をチャラにしたとして当時、メディアで話題になった女傑である。 映画「子連れ狼」の拝一刀をはじめ、「火の鳥」では猿田彦、また「ブラック・レイン」では極道のボスを演じるなど、重厚な演技で日本映画界にその名を刻んできた若山。 だが若い頃には、弟の勝が先に「座頭市…