元禄4年6月13日、文左衛門は佐分氏へ槍稽古に出かける。夕飯後半(1時間)過ぎると重なりあった雲が乾(北西)から湧きおこり、にわかに雨が降り始める。人々は大騒ぎし慌てて槍を片付ける。草履は手に持って濡れないようにする。大雨が降り続き、強風が吹き荒れる。ようやく迎えの下僕近友と帰宅する。雷雨は夜明けまで続く。この雷が服部甚蔵宅に落ちたとも。甚蔵宅の奥には八畳の間があってそこで妻子は暮らしていた。壁に沿って長刀が掛けてあり、その下にはひとり幼い娘がいた。雷が鳴る中、長刀の上に雫がかかったことで火の玉が飛び回り、柱を上って消え去る。柱2本は朽木のようになる。もし長刀がなかったら養女は災いから逃れられ…