元禄6年1月26日。未半刻(午後2時)から雨が降り始める。日暮れに黒い雲が空を覆い、激しい風が吹く。狂ったような雨が家を射る。戌の刻(午後7時)、角兵衛がやって来て、関平の長屋に隠れていたが密かに母親に伝えてほしいと。今まで大変お世話になっており、生きているうちはその恩に報い、死んだ後はあなたのことをお守りすると。白い木綿を着て雨合羽をはおり、悲しみのあまり泣き叫ぶ。まず親は知らぬこととして志賀へ遣わし、再び側に置くことにする。子の刻(午後11時)、強い西風がおこり、家を揺らす。板が飛び、垣根が倒れる。雷が轟き、強い雷風が数度吹く。