ApoE

レカネマブ（商品名レケンビ）の副反応として脳血管性の浮腫や出血（ARIA)が大きなリスクとなることはよく知られています。そして、そのリスクはApoE4を二つ持つホモの人では、著しく高いことから、米国では、ApoE遺伝子検査を事前に行って、リスク評価を行うことになっています。（詳しくはブログの記事https://ninchinosekai.hatenablog.com/archive/2024/06 をご覧ください） これまでに、レケンビ投与を受けたApoE4ホモの早期アルツハイマー病患者（米国人女性）が、重篤なARIAを起こし、多発性脳血管炎で死亡した１例が論文として報告されています。 アルツ…

この7月26日に、EUの欧州医薬品庁（EMA)は、医薬品の科学的評価を担当する委員会の協議をもとに、レカネマブの販売を承認しないことを勧告したと発表したというニュースがでていました。 この決定によって、レカネマブの承認は欧州では見送られることになりそうです。 その理由として、レカネマブの認知機能低下を遅らせる効果が小さいこと、レカネマブの副反応であるARIA（アミロイド関連画像異常）は高頻度に起こり、脳出血などの重篤な副反応も起こりうること、さらに、ARIAのリスクは、アルツハイマー病でレケンビ治療の対象となりそうな、ApoE4を２つ持つホモの人では最大になることが懸念事項としてあげられていま…

前回と前々回に、レカネマブの副反応として重要なARIAの頻度が、ApoE遺伝子型によって異なることから、米国では、投与前にApoE遺伝子型検査をすべきということが定着しているのに、日本では、その点がうやむやなままになっているということを書きました。 実際、レカネマブの適正使用ガイドラインでは、米国のような注意書きがのっていません。 それでは、日本では、指針のようなものはでていないのか、私も気になって調べてみました。 私の調べたかぎり、一つだけ指針的なものを見つけました。それは、認知症関連６学会が、監修して作成した、「認知症に関する脳脊髄液・血液バイオマーカー、APOE検査の適正使用指針 」第2…

前回の記事に書いた通り、レカネマブ（レケンビ）の投与前検査として、MRI、アミロイドPET（あるいは脳脊髄液検査）は全例に実施することになっています。しかし、ApoE遺伝子型検査は、アメリカでは実施すべきとなっているのに、日本では、そういう但し書きがありません。日本では、この部分は医師の裁量に任されているのが現状といえます。 アメリカの大学病院ではどうなのかということについて、いくつかの病院のホームページを調べてみました。 アメリカの中でも最高峰といわれるマサチューセッツ総合病院（ハーバード大学医学部）のHP Memory Disorders Divisionをみてみますと、脳アミロイドの検査…