田舎育ちの人間にとっては 映画館は「遠き」モノであり、 それ故に非日常的な場所だった。 「映画を観る」となると もっぱらTVのロードショーや 山を降りた街にある レンタルショップで DVDを借りるしか手段がなかった。 そんな人間が上京し 真っ先に通ったのは映画館だった。 「遠き」モノがそこら中に点在し まるで大人が駄菓子を漁るが如く、 暴力的なまでにあちこち自転車を飛ばした。 何より魅力的だったのが 『単館』と呼ばれる存在。 懐古主義的な思想に偏っていたので 主にリバイバル作品を観るため 訪れるのが日課であり、 DVDでしか見知らなかった作品を スクリーンで観れる喜びはひとしおだった。 しかし…