「有楽町に"コンボ"というジャズ喫茶があった。レコードを入手するのがむずかしい時代。お店でレコードを聴いて、サイフした」 サイフ?財布? 採譜でした。 モノも情報もない、終戦後の音楽シーン。いわゆる焼け野原から立ち上がり、アメリカへ行き、生き抜き、成功した彼女の言葉はひとつひとつが、重い。だけど、さりげなく話す。サブスクで、音楽を滝のように聞くことができる今の時代、想像もできない未体験の時代。時間旅行をして、貴重なエピソードを聞いた。 左寄りのアリーナ席、ピアノのほぼ正面、前から2つめのテーブル。ときどき、ピアノを弾く彼女の指が見える。まるでモーゼの十戒のように、観客の頭や体がすーっと引くと、…