電車が来るまであと五分。五分あればなんとか駅そばをかき込むことが出来るだろう。そう時間を読んで、蕎麦を頼む。熱い蕎麦にふぅふぅと息を吹きかけながら、口の中をやけどするのも構わず、どんどん食べた。今から思うと、ホームの蕎麦屋で時間ぎりぎりに蕎麦を食べることを旅のひとつの楽しみに思っていたのかも、あるいは今もそう思っているのかもしれない。好きなのは、かき揚げ蕎麦かコロッケ蕎麦か、あるいは竹輪天またはごぼ天の蕎麦だ。かき揚げ蕎麦のかき揚げは蕎麦汁に浸ってくにゃっとなり、天ぷらの油が蕎麦汁に混じるのがいい。そこで蕎麦の上に乗っけて出てくるかき揚げは、食べ始める前、最初に蕎麦の麺の下に沈めてしまう。これ…