霧の奥に見えた塔は、近づくほど遠くなった。 最初は、枯れ木のように見えた。次に、鉄骨だと分かった。そして最後に、それがアンテナ塔の輪郭だと理解した。 塔へ近づくドミノ だが、理解したからといって、そこへ簡単に辿り着けるわけではない。 湿地の道は、まっすぐに見えて、少しずつ曲がっている。水たまりを避ければ足場が沈み、乾いた場所を選べば古い舗装の割れ目が靴底を噛む。草の根は道を奪い、錆びた標識は倒れたまま、どちらへ進めと言うわけでもなく沈黙している。 ドミノは歩幅を変えなかった。 急げば音が出る。音が出れば、耳のいいものに拾われる。そしてこの土地には、人間よりも線を好む耳がある。 昨日、北湿地の中…