遊蕩爺の漂浪メモ

『翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記』 より移行

オバマ新政権の軍事政策 Watch: その11  ロバート・マクナマラさん死去

YAHOO 「アフガニスタン復興」 トピックスを中心に、『オバマ新大統領発表の アフガン政策新包括戦略 Watch』 として見て来ましたが、事態をより広く把握するため、主に以下サイトの記事を中心として 『オバマ新政権の軍事政策 Watch』 へと題名を変更して継続することに;


ベトナム戦争推進派であったマクナマラ元国防長官死去のニュースを取り上げますが、お名前は存じ上げているもののキーとなる書籍など未読のため、今回は紹介にとどめざるをえません;

マクナマラ氏死去 元米国防長官 ベトナム介入拡大
7月7日7時56分配信 産経新聞

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090707-00000093-san-int
よりの抜粋;


---ケネディ、ジョンソン両米政権下で国防長官を務め、ベトナム戦争の遂行責任者だったロバート・マクナマラ元国防長官が6日、ワシントン市内の自宅で死去した。93歳だった。同氏の妻がAP通信に語った。


---マクナマラ氏が記憶されているのは「ベトナム戦争を主導したこと」(米紙ワシントン・ポスト)だった。米軍兵力を増強するなどベトナムへの軍事介入の拡大を図ったが、戦争の長期化・泥沼化を招いた中心的存在として非難を浴びた。特に故デービッド・ハルバースタムは著書「ベスト&ブライテスト *1 」で、元長官を戦争の実態を知らないテクノクラートと痛烈に批判した。

 マクナマラ氏は長くベトナム戦争に関し沈黙を保っていたが、冷戦終結後に出した回顧録で「ベトナムへの軍事介入は完全な間違いだった」と振り返った。2003年には自らの告白をまとめた映画「フォッグ・オブ・ウォー *2 」に出演した。


マクナマラさん Mr. Robert Strange McNamara については、Wikipediaの 【ロバート・マクナマラ】 に詳しいので参照。なお亡くなられて間もないため、同サイトの記事冒頭に、「この項目は亡くなったばかりの人物について扱っています。その人物の死の詳細や死者を取り巻く環境また状況が知れ渡っていくに従い、この項目の内容もまた急速に大きく変化することがありますのでご注意ください。

投稿者は検証可能性を必ず確認の上、正確な記述をお願いします。また出典の挙げられていない死に関する記述については、一切残さず全てを除去してください。」 の但し書きが付されています。


同記事から以下抜粋します;

---マクナマラは、ケネディ政権時に国防長官としてベトナムへの軍事介入の拡大を行って以来、忠実に政府の指針を実行したが、後にはベトナムへの戦力増強と北爆の強化で戦争に勝利できるかどうか懐疑的になりはじめていた。マクナマラは自ら戦争の状況を確認するため、何度もベトナムに足を運んだ。軍司令官の要求する部隊の増派の承認に対して、次第に消極的になっていった。1967年の11月初旬、マクナマラは、かつて自らが実行に向けて動いた北爆の停止と南ベトナムでの戦闘停止を提案するが、ジョンソン大統領に拒絶される。同年11月29日、マクナマラの辞意と、世界銀行総裁への就任が発表される。その後自由勲章を受章した。


後年自らの著書 *3 において、ベトナム戦争を「北ベトナムの南部への侵略戦争」とする当時の自身の公式見解を覆し、「南ベトナム民衆による反乱・内戦であり、北ベトナム軍とその南の同盟者解放戦線による『人民戦争』であった」と位置づけている。


カリフォルニア大学バークレー校で経済学を専攻、数学・哲学を副専攻後、ハーバード大学ビジネススクールでMBAを取得された同氏は、その後のキャリアの全てにおいて、常に企業経営に用いる数値解析手法を駆使して活躍され、それが評価の軸となっている様ですね。


昨日まで身を置いていたビジネスの世界で、私は優秀だなと思えるMBAにお目にかかったことがありませんからそんな資格は○○喰らえ、なのですが、 『カリフォルニア大学バークレー校』 に関しては、非常にリベラルな校風と云うイメージが強い。知名度は抜群であり多数のノーベル賞受賞者も輩出していますが、科学分野では原子爆弾水素爆弾の開発に最も貢献した大学、と云う、私の基準では不名誉な面もありますが。


録画時間が1時間を超えるのでここに埋め込むことは避けますが、UCTV (カリフォルニア大学TV) 製作の "Conversations with History: Robert S. McNamara" を紹介しておきます。ホストを務める Harry Kreisler 氏は同校の理事であり、Conversations with History と云うインタビュー番組 *4 のプロデューサー兼インタビューア。


なお上述の映画 "The Fog of War" に関してはYouTubeで様々な動画が紹介されています。例えば;


題名: The Fog of War (Part 6)
11 lessons from Robert S McNamara. A wise man's tale

いきなりクルマの話題で始まりますが、これはマクナマラさんが1946年に入社後頭角を現して社長に就任した1960年まで自動車メーカーフォード社で勤務されていたことによります。ただしJ・F・ケネディ大統領の招へいを受け社長就任後間もなく国防長官就任を受諾。動画ではそのあたりのことが扱われています。なお副題の 『11 lessons (11の教訓、ですかね?)』 は、英語版 Wikipedia"The Fog of War"】 に記載のある "Eleven lessons from the Vietnam War" を指すと思われます。以下抜粋しますと;

  1. We misjudged then — and we have since — the geopolitical intentions of our adversaries … and we exaggerated the dangers to the United States of their actions.
  2. We viewed the people and leaders of South Vietnam in terms of our own experience … We totally misjudged the political forces within the country.
  3. We underestimated the power of nationalism to motivate a people to fight and die for their beliefs and values.
  4. Our judgments of friend and foe, alike, reflected our profound ignorance of the history, culture, and politics of the people in the area, and the personalities and habits of their leaders.
  5. We failed then — and have since — to recognize the limitations of modern, high-technology military equipment, forces, and doctrine.
  6. We failed, as well, to adapt our military tactics to the task of winning the hearts and minds of people from a totally different culture.
  7. We failed to draw Congress and the American people into a full and frank discussion and debate of the pros and cons of a large-scale military involvement … before we initiated the action.
  8. After the action got under way, and unanticipated events forced us off our planned course … we did not fully explain what was happening, and why we were doing what we did.
  9. We did not recognize that neither our people nor our leaders are omniscient. Our judgement of what is in another people's or country's best interest should be put to the test of open discussion in international forums. We do not have the God-given right to shape every nation in our image or as we choose.
  10. We did not hold to the principle that U.S. military action … should be carried out only in conjunction with multinational forces supported fully (and not merely cosmetically) by the international community.
  11. We failed to recognize that in international affairs, as in other aspects of life, there may be problems for which there are no immediate solutions … At times, we may have to live with an imperfect, untidy world.


さてこの教訓は活かされているのか?

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*1:"The Best and the Brightest (ペーパーバック) "、翻訳本は絶版の様ですが、英語版は入手可: 出版社: Ballantine Books; 20 Anv版 (1993/10/26)
ISBN-13: 978-0449908709

*2:原題 "The Fog of War" http://www.sonypictures.jp/movies/fogofwar/site/

ただしこの映画に関しては、ケネディ政権とジョンソン政権下でベトナム戦争への軍事介入政策を推し進めた直接的な責任者であったマクナマラ国防長官の自己弁護の要素が強いとの批判もあり。

*3:マクナマラ回顧録 ベトナムの悲劇と教訓 (単行本)

ロバート・マクナマラ (著), 仲 晃 (翻訳)

出版社: 株式会社共同通信社 (1997/05) ISBN-13: 978-4764103832


果てしなき論争 ベトナム戦争の悲劇を繰り返さないために (単行本)

ロバート・マクナマラ (著), 仲 晃 (翻訳)

出版社: 株式会社共同通信社 (2003/05) ISBN-13: 978-4764105232

*4:url = http://globetrotter.berkeley.edu/conversations/