悪魔くん千年王国(全) 全1巻 水木しげる
- 作者: 水木しげる
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1988/06/01
- メディア: 文庫
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人類史上まれに見る天才的な頭脳の持ち主「悪魔くん」が、この地上に人類のユートピアである「千年王国」を実現すべく、知力と魔力の限りを尽くして人間や化け物と闘うという物語。
こりゃーもうね、テレビアニメで昔やってた悪魔くんとはもう全然違います。目的のためには手段を選ばない悪魔くんの権謀術数っぷりには驚愕するわ、百目はいないわ、そこはかとなく不気味さが漂います。出てくる12使徒がそこらへんにたまたまいたヤツで構成されているのがけっこう笑える。ヤモリビト、イモリ人、フクロウ女、家の番人のおっさんとその妻(!)、ベルゼブブなどが12使徒になっていくというあんばい。すごすぎ。
んでこれ、人類のユートピアというのがつまりは全ての人が平等で幸せな暮らしをする社会、というように定義されているんだけど、このあたりがけっこう共産主義的であり、なんとなくレフトウイングな印象を受けた。水木しげるは戦争経験者で、戦争によって腕を失った人なのだけど、そのあたりの気持ちが作品に反映されてるのかなーという気がした。
そしてラスト、衝撃です。悪魔くんは人間のピストルに撃たれ、死亡します。しかし、その遺体は見つからず……という具合(この後、最後の最後にオっというどんでんがえしあり)。つくづくテレビ版とのギャップを堪能した作品でした。うーん、普通の悪魔くんも読みたくなってきたなあ。昔、コミックボンボンで連載していたような記憶がかすかに……。B
劇画近藤勇 星をつかみそこねる男 全1巻 水木しげる
- 作者: 水木しげる
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1989/07/01
- メディア: 文庫
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さてこの作品、550ページくらいの大長編作品です。話は近藤勇が多摩から天然理心流の道場に、養子として引き取られていくところあたりからはじまる。近藤勇は武士として生きたかったようなのだが、その結果としての最期において、彼は幸福だったのだろうか。あと、この作品ではじめて、わりとちゃんと幕末の勢力図というか流れが理解できたような気がした。「ははぁ、こういう流れで新撰組は悲しい末路になったのだなー」という歴史的分岐点がちゃんとわかって、このあたりを魅せる力量は水木御大、さすがだと思う。
近藤勇の妻は馬づらだ、ということがわかったのも収穫。そうなのかー! と軽くびっくりした。あと山南さんの最期もいとはかなし。名前がわかってるキャラはどうしてもテレビのキャスティングを想像してしまうので、常に下から見上げるキラ眼の山南さんを思い浮かべるのであった。
それと、吉村貫一郎という新撰組下級武士の最期も描いてあって、組織のむなしさも描かれてました。いやー、すごい読み応えあるわ、これ。B+