評価:★★★★星4つ
(僕的主観:★★★★星4つ)
まぎぃさんにおすすめされてみましたが、自分的にはイマイチ。フランチャイズ でもシリーズ物でもないオリジナル脚本のSF大作でしたが、ドラマ性よりは、未見性に寄りすぎているために、感情移入がしにくかった。とはいえ、流石のギャレス・エド ワース監督で見どころは満載でした。反乱軍のリーダの渡辺謙 もいい味を出していました。みた媒体は、ディズニー+。ただし、最初は自分のパソコンのモニター30インチより大きいでみたのですが、途中で眠くなってしまいベットのタブレット で見たらいきなり陳腐になったので、SFはやはり大きな画面で見ないとダメだなと痛感しました。映画館で見るべき作品でした。。。ギャレス・エド ワース監督は僕にとってはなんと言っても『ローグ・ワン(Rogue One: A Star Wars Story)』なのでそちらも見ておきたいかも。
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ペトロニウス の見る視点は3つ
1)衛星軌道上のNOMAD の未見性
SF全般に言えるが、特に対策では、そのビジュアルイメージの未見性、今まで見たことがないものを見たという感覚があるかどうかが、全ての評価基準と言っても差し支えないと僕は思っている。
全般的に、ギャレス・エドワーズ らしく、『AKIRA 』や『風の谷のナウシカ 』、自作品の『ローグワン』からのオマージュに溢れていて、ハリウッドの映画なのに、日本的な映像体感が混じっているのは、新世代の監督だなだなと感じます。随所に訳の分からん日本のカタカナや漢字が溢れているところや、反乱軍のリーダーが渡辺謙 で、時折日本語で叫びまくっているところも、その感覚を強くします。
もちろんそういう、『ブレードランナー 』的なビジュアルも凝っていて随所にこだわりを感じて楽しいのですが、ある意味、日本人の僕らには見慣れた風景でもあります。未見性のセンスオブワンダーとの視点に立てば、やはり衛星軌道上にある巨大ステーションNOMAD (ノマド )の圧倒的な存在感が、なんだかんだいって西洋諸国、アメリ カの列強パワーズ としての覇権性を感じさせて良かった。要は究極の戦略爆撃 兵器ですよね、これ。地上部隊を派遣して、場所を特定して、さらには衛星軌道上からレーダー?を照射して、巨大ミサイルを撃ち込む。宇宙での制宙権、制空権を両方アメリ カが手にしているという設定な訳でしょう。
ポスター等でも推して出ていますが、この映像が僕にはしびれるものがありました。SFの設定として、このまま宇宙からの戦略爆撃 兵器が、制宙権、制空権がこれからの人類の大きなポイントの一つだと思うからです。まぁ天空の城ラピュタ のラピュタ 人みたいなものですね。反逆のルルーシュ のダモクレスの剣 とか。
ただ、この巨大建造物を宇宙軌道上に作ることを、ライバルであるニューアジアが許したことがちょっと信じられない。建設の期間中に、戦争起きちゃうでしょ、これだけの戦略兵器を作ったら。。。と思い始めると、色々設定に???がついてしまうので、僕にとっては、「そんなのどうでもいいや!」となるくらいリアリティラインを押さえ込む未見性はなかった、
ちなみに、昨日(2024/3/9)に劇場版『大雪原のカイナ ほしのけんじゃ』を見たんですが、巨樹「軌道樹」の上に「天膜(てんまく)」のイメージが、あらゆる細かいことを超えて「未見性のセンスオブワンダー」になっていて、こちらの方にこの視点では軍配が上がってしまうのなぁと思ってみていました。
2)アメリ カに対しての不信感のイメージの奔流
ノラネコのさんがこう書いている。
妙に既視感のある設定だが、これは従来のアメリ カの戦争、外交政策 に対する不信感が影響しているのだろう。
存在しない大量破壊兵器 を口実に、イラク戦争 を開始して以来、対テロ戦争 という泥沼に引き込まれ、世界中に難民を溢れさせた事実を、存在しない脅威を口実に、AIとの戦争を始めた映画の設定に置き換える。
劇中で米軍は、ニルマータを殺害することを目的に、他国に好き勝手に戦闘部隊を送り込んでいるが、これもビンラディン 殺害作戦などで実際に米軍がやっていたこと。
舞台が南アジアなのも、かつての大義 なき戦争であるベトナム戦争 を思わせる。
人間の姿のAIが、ほとんど有色人種なのもこの文脈だろう。
AIと戦争した結果、米軍はAIを使えなくなったので、自立思考できない自爆ロボットなどを使ってAIを攻撃しているのは、現実の逆転ですごくシニカルだ。
ハリウッドの大作でここまで明確に、アメリ カそのものを「悪」と認定した映画は珍しい。
ノラネコの呑んで観るシネマ ザ・クリエイター 創造者・・・・・評価額1700円
主人公であるジョシュア・テイラー 軍曹(ジョン・デヴィッド・ワシントン)はアメリ カ側の特殊部隊員なのだが、ニューアジアは、どう考えてもイメージがベトナム 。
アメリ カ史を語る上でも、アメリ カの映像史を考える視点でも、ベトナム戦争 が、アメリ カ人が初めて知った具体的なアジアであるのは間違いない。アメリ カの普通の徴兵された市民が、若者が、大量にアジアに送り込まれたのだから。NOMAD という戦略爆撃機 による制空権を手に入れながら、地上部隊が侵略のために海辺やジャングルを侵攻していくイメージは、まさにガチのベトナム戦争 。もうメタファー通り越して、そのものでしょって感じ。この部隊設定と絵面では、明確なベトナム戦争 との結びつけ位を意図的にやっているとしか思えない。ニルマータという他国の指導者を暗殺するために、好き勝手に自分たちの軍隊を派遣するさまは、まさにアメリ カの最近の振舞いそのもの。ノリエガ将軍の逮捕やビンラディン 暗殺を強烈に連想する。さも当たり前のように特殊部隊を、他国に侵入させることに、誰も心理的 な抵抗がない様は、アメリ カの正義の傲慢な振る舞いを、アメリ カ人以外は、誰も感じ取ると思うのですが、それがアメリ カの映画で作られる皮肉は、ハリウッド映画ではよく出てきますね。この辺は、知識があればあるほど、さまざまなものと連想するので、面白さが倍増します。映像体験の蓄積があるほど、いろいろなオマージュや比喩がわかるので、楽しくなります。『ゼロ・ダーク・サーティ 』とかは見ておくとなるほどと思うかも。テイラー 軍曹の上官であるハウエル大佐 -(アリソン・ジャネイ )が忠誠心あふれるプロフェッショナルな女性指揮官であることからも、これを連想しますね。
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僕は今、アラフィフですが、2001年の911 事件、アメリカ同時多発テロ事件 (September 11 attacks)あたりは、自分が就職して社会人いなってまもない頃で、この後の、アメリ カの20年以上の振る舞いを見続け、それによって影響を受ける人生でしたので、この辺りへの批判性については、ビビッドに反応します。それにしも、ノラネコさんがいう通り、これだけ米国を「悪」を描くのはめずらしい。よく脚本通ったなと思います。
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3)AIには愛はあるのか?
「AI、ロボットは人類の友人」という日本的感覚がベースにあるので、西洋諸国VSニューアジアという設定になっているんだろうと思う。映像の感覚は、『ブレードランナー 』だと思う。この視点から二点気になっているポイントがあります。二つとも、女性指揮官であるハウエル大佐のシーンですね。
一つは、大佐が軍曹に語るエピソードです。彼女の息子は、AIが言った「愛している」によって騙され殺されています。実際どんなことがあったかは、全くわからないのですが、人間を殺すためにAIが兵器で嘘をつくことは念頭に入れておかなければならないというイメージは、強く残ります。この伏線がどこにも効いていない気がするのですが・・・・。これってフィリップ・K・ディック 的なイメージを醸し出しています。結局、アルフィー とジョシュア・テイラー軍曹の間に愛があったのか?とか、この辺りのことは、僕には見ていてモヤモヤしました。最終的には、NOMAD を倒した訳ですから、AIとの同化政策 を進めるニューアジアを止めることはできなくなると思うのですが、それでいいのかどうかがイマイチ腑に落ちません。それほどに、大佐の息子のエピソードは、重い感覚を受けます。この辺りは、ヒューマノイド は人間の友であるという手塚治虫 の『鉄腕アトム 』以降の日本的なものから派生して、『PLUTO 』的な物語の文脈を感じます。
二つ目は、これも大佐のエピソードですが、西側諸国、、、というかもう米軍っていってもいいと思うのですが、思考能力の低いヒューマノイド を自爆攻撃に使うシーンです。なんの良心の呵責もなく、自爆攻撃にさらっと命令を出していますが、「AIによる機械だって人間かもしれない」という前提を延々と見せられている中で、それをさらっとされると、異様です。その異様さに対して何一つ疑問を持たない米軍の様も。
全般的に、ギャレス・エド ワース監督ですから「ヒューマノイド は人間の友」という路線に、正しさを感じていると思うのですが、とはいえ、作品は、微妙にそれへの恐怖が隠れている。
結局、どっちが正しいの?
ということに答えが出ていない感覚がして、モヤモヤして仕方がなかったです。これって、SFの大きな問題意識の
旧人 類 VS 新人類
この過渡期の争いにどういう方向性をつければいいのか、分からないって感じるんですよね。もっと遠い時代の話ならば、もっと割り切れたり、もしくは過渡期のモヤモヤをうまく受け止められたのかもしれない。けれども、AIがガンガン開発が進む2024年のAIバンザイの雰囲気と、アメリ カを中心等する勢力と、それ以外の地域の対立構造の「最前線感覚(=今目の前で起こっている)」があるので、色々考え込んでしまう。クロマニヨンと現生人類の話も出てきたが、まさにそれだよなって思う。
SFを見ると、SFのテーマがどこまできたか?って、いろいろ考え込んでしまう。まぁこういうのをインスパイアしてくれるのは、良作だったということでしょう。3月のアズキアライアカデミアのテーマは、竹宮恵子 さんの『地球へ』なので、この話をしそうです。
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